5 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 22:44:07.21 ID:F4oMipMY0

まどか「逃げようって思わないの?」



ほむら「……まどか、突然何を言い出すの」

まどか「だってワルプルギスの夜って、すごく強い魔女なんでしょ?」

ほむら「そうよ。結界で自分の身を守る必要もない、強大な魔女。その出現は災害と同意義。
    表向きは地震やスーパーセルといった局地的な自然災害として観測されてきた……」

まどか「そんな魔女に、ほむらちゃんは勝てるの?」

ほむら「……確かに、私一人では無理かもしれないわね。けれど」

マミ「大丈夫よ、鹿目さん。今の見滝原には四人も魔法少女がいるんだもの」

さやか「そうそう! 見滝原の平和は、あたし達魔法少女がガンガン守っちゃいますよ~!」

杏子「えっらそーに。さやかはむしろ足手まといにしかならねーってのがオチじゃねーの?」ムシャムシャ

1

http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1356788563/
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1356835990/
6 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 22:48:43.65 ID:F4oMipMY0

さやか「って杏子! 何であたしのケーキまで食べてんのよっ!?」

杏子「授業料だよ授業料。いいだろこれくらい。出来の悪い後輩の尻拭いしてやってんだから」

さやか「なんだとぅ」

杏子「つーかさぁ。さやか、前から言っときたかったんだけどオマエいちいち危なっかしいんだよな。
   今日の戦いなんか、あたし達が一緒じゃなかったらどうなってたかわかんねーぞ」

さやか「うぐ……そ、それは、確かに今日はそうだったかもだけどさぁ」

杏子「今日だけじゃねぇよ。この前の戦いだって見れたもんじゃなかったぞ? 力任せっつーか回復力頼みっつーか。
   いくら自己回復力高いからって効率悪すぎだろ、あれじゃ」

さやか「ぐぬぬ」

マミ「大丈夫よ、美樹さんは最初の頃より確実に強くなってるわ。
   ワルプルギスが来るまでには、きっと一人前になれるわよ」

さやか「ま、マミさぁ~んっ……(ジーン」

マミ「佐倉さんも。うかうかしてると、すぐ美樹さんに追いぬかれちゃうかもしれないわよ?」

杏子「けっ、そりゃねーな。マミはさやかを甘やかしすぎ」



7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 22:52:01.77 ID:F4oMipMY0

マミ「あら、そう?」

杏子「そーだよ。後輩に躾けできない甘いとこ、昔っからてんで変わっちゃいねーじゃん」

マミ「そうね。確かにわたしは甘いところがあるかもね」

杏子「そうそう」

マミ「じゃあ今からちょっと厳しくすることにして……
   いじわるな佐倉さんの明日のおやつ、抜きにしちゃおうかしら?」

杏子「なっ!」ガタッ

杏子「ず、ずずずりぃぞマミ! ケーキで脅しやがってっ!」

マミ「あら何のことかしら? わたしはただ、後輩を躾けできない先輩からそろそろ卒業しようかなぁ、
   なんて思っただけなんだけど?(フフッ」

杏子「ぐぬぬ」

さやか「ざまーみろ」

杏子「うっせ。ばか」

マミ「ふふっ(クスクス」

ほむら「じゃれあいはそのくらいにね」

ほむら「顔ぶれも揃ったところで、これから第一回『ワルプルギスの夜対策会議』を始めるわ」



9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 22:56:42.87 ID:F4oMipMY0

ほむら(今回のループもいろいろあったけど……今日までまどかを魔法少女にせずに済んだ。私が未来から来たことも信じてもらえた)

ほむら(胃がねじ切れそうなほど苦労したし、美樹さやかを魔法少女にしてしまったのは手痛いけれど。
    奇跡的に全員を無事なまま、ワルプルギスの夜との戦いを迎えることができそう)

マミ「見滝原の街も街の人達も、必ず守ってみせなきゃね」

さやか「うんうん! なんだか燃えますよね、見滝原の命運はあたし達に託されたのだー、って!」

杏子「あたしはどーでもいいんだけどな。ま、ここまできたら一応最後までつきあってやるよ」

さやか「素直じゃないなぁ~。そんなこと言ってぇ、ホントはさやかちゃんのことが心配なんだろぅ?
    かわいいやつめ~、うりうり」

杏子「は? ち、ちげーしっ。っていうか、うりうりすんなっ。うぜぇ、ちょーうぜぇっ」

ほむら(偶然の要素もある……よく分からないうちに上手く事が運んでいたりもした。
    今の状態は狙って何度も作れるものじゃない。この時間軸は絶対無駄にできない……)

ほむら「……今度という今度こそ、ワルプルギスの夜を倒す」

ほむら(そして今度こそ――)

ほむら(まどか、絶対にあなたを救ってみせる……!)

まどか「だからね、ほむらちゃん、みんなも、聞いて」

まどか「何で戦うこと前提なの? わたし、さっきからずっと気になってるんだけど」

まどか「何で、ワルプルギスの夜から逃げようって思わないの?」



12 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 22:59:50.49 ID:F4oMipMY0

ほむさやマミ杏「………………」

ほむら「まどか。ワルプルギスの夜は最強最悪の魔女よ。
    ワルプルギスの夜を倒さなければ、見滝原は壊滅する」

マミ「そうなれば、何千というひとが犠牲になるわ。だからわたし達は」

まどか「そうじゃないんですマミさん。そうじゃなくて」

まどか「そもそも、どうしてワルプルギスの夜を倒さなきゃいけないんですか?」

ほむマミさや杏「「「「…………はぁ?」」」」

まどか「ほむらちゃん。ほむらちゃんはワルプルギスの夜のこと、災害みたいなものだって言ったよね」

ほむら「そうね。そう言ったわ」

まどか「来るのがわかってる災害なんだよね? ほむらちゃんの……統計で」

ほむら「……そうね。そう言えなくもないわ」

まどか「でね、わたし思うんだけど……
    犠牲を出さないのが目的なら、まずは見滝原から街の人達を避難させればいいんじゃないかな?」

まどか「街は壊されちゃうし、そのことはつらいけど、でも街の人達だけは助けられるでしょ?
    そしたらほむらちゃん達だって、無理に戦う必要はなくなるんじゃないかなって」



13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:03:08.23 ID:F4oMipMY0

ほむら「……………………」

ほむら「……まどか、あなたは優しすぎる」

ほむら「けれど、これは魔法少女の問題。本来あなたは関わるべきではないわ。私達に任せて」

まどか「ほむらちゃん……」

マミ「まあまあ暁美さん。そんな邪険にしなくてもいいじゃない」

ほむら「巴マミ……」

マミ「魔法少女ではないけれど、鹿目さんもわたしの大事な後輩……わたし達の仲間でしょう?」

マミ「ワルプルギスの夜が現れるまでまだ時間はあるわ。
   鹿目さんの提案も、一度きちんと検討してみていいんじゃないかしら」

さやか「そうだぞほむらー。あたしの嫁を仲間はずれにするのは、このさやかちゃんが許さんぞー」

ほむら「誰があなたの嫁よ」

ほむら(まどかは私の嫁よ!)

ほむら(……って、いやいやそうじゃなくて)

まどか「………………」オズオズ

ほむら(上目遣いでこっちを伺ってるまどか超かわいいわ!!!!///////)ホムーン!!

ほむら(って、だから違ぁーう! 落ち着きいなさい私!!)



14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:07:14.11 ID:F4oMipMY0

ほむら(確かに……まどかを魔法少女から遠ざけておきたいとはいえ、完全に閉め出してしまうのは却って危険ね。
    まどかは私達の力になれないことを気に病むあまり、思い余ってキュウべぇと契約してしまいかねない)

ほむら(もしそんな事にでもなれば、せっかく上手くいっているこの時間軸まで無意味になってしまう。
    魔法少女になることの危険性は重々言い聞かせてあるけれど、まどかの性格を考えれば楽観はできない)

ほむら(ならいっそ私の目の届くところで、適度な範囲で関わらせておく方が、まだ安全か……)

ほむら「……そうね、ごめんなさい。確かに巴マミの言う通り。私が狭量過ぎたわ」

マミ「なら今回の会議は、鹿目さんの提案を叩き台に話を進めるということで?」

ほむら「ええ。構わないわ」

マミ「ということらしいわよ。鹿目さん」

まどか「はいっ! ありがとうございますマミさん!」

マミ「ふふっ、どういたしまして」

まどか「ほむらちゃんも、ありがとう!」

ほむら「感謝されることじゃないわ(笑顔のまどかがやっぱり一番かわいいわホムホム)」



16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:10:11.90 ID:F4oMipMY0

まどか「じゃあまずは最初の疑問に戻るんだけど、ほむらちゃんはどうしてワルプルギスの夜を倒したいの?」

ほむら「何を言ってるのまどか。それはまどかが」

ほむら「………………」

ほむら「あれ?」

ほむら(待って。そもそも私がワルプルギスの夜と戦い始めたのはまどかを救うためであって)

ほむら(私がワルプルギスの夜を倒せないと、まどかが魔法少女になったり魔女になったり死んじゃったり
    してしまうからであって)

ほむら(でも今のループは、まどかが自分から、ワルプルギスの夜を放置して逃げようと言ってくれている
    のであって)

ほむら(あれっ? もしかして私がワルプルギスの夜と戦う理由、なくなってる?)

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「分かったわまどか、逃げましょう。二人で地の果てまで」ガシッ

まどか「ほむらちゃん一体何を言ってるの?」

ほむら「えっ?」

まどか「えっ?」

ほむら「………………」



18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:13:26.45 ID:F4oMipMY0

ほむら「ごめんなさい、少し取り乱してしまったみたい」ファサッ

杏子「今の会話のどの辺りに取り乱す要素があったんだよ、オイ」

ほむら「ともかく、まどかの言いたいことはよく分かったわ(キリッ」ファサッ

杏子「誤魔化す気かよ。いいけど」

さやか「そのファサッっていうの、座りながらだとあんまり様になってないよね」

ほむら「黙りなさい美樹さやか。
    まどか、まずこの地図を見て。今までの統計で、ワルプルギスの出現位置はだいたいこのあたり……」

まどか「待ってほむらちゃん」

まどか「具体的な検討をはじめる前に、わたし達の勝利条件を明確にしておいたほうがいいと思うの」

ほむら「えっ?」

まどか「『見滝原の街を守る』、『街の人達を守る』、『ワルプルギスの夜を倒す』……
    ほむらちゃんの話から考えると、大きく分けてこの三つかな」

まどか「今は話の中でごっちゃになってるけど、これって少しずつ違うことだよね」

まどか「何を優先するのかきちんと決めておかないと、
    いざというとき行動の指針が決められなくて大変じゃないかなって」



20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:16:14.74 ID:F4oMipMY0

ほむら「………………えーと」

ほむら「今日のまどかは何かがおかしいわ」

さやか「奇遇だねぇほむら。あたしも同じことを思ってたよ」

ほむら「うわぁ、屈辱だわ。美樹さやかと同じだなんて」

さやか「あんだとこら」

ほむら「どういうことかしら。基本的にはいつもどおり、私のかわいいまどかなのに」

さやか「うわ。なんか今こいつ聞き捨てならないこと言った」

ほむら「気のせいよ」ファサッ

さやか「なかったことにする気かあんた!」

杏子「そのファサッてやつでなんでもごまかせると思ったら大間違いだからな」

まどか「お願いだからみんな話を聞いて。
    あのね、話を詰める前にちゃんと確認しておきたいんだけど、わたし達の勝利条件って何だと思う?」

まどか「『何を達成すれば』、わたし達の勝ちだと思う?」

ほむら「……………………」



22 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:19:21.81 ID:F4oMipMY0

ほむら(私の勝利条件――まどかを魔法少女にせず、ワルプルギスの夜を越えること)

ほむら(けれど、まどかは優しい。
    ワルプルギスの夜で大きな被害が出てしまえば、あるいは私達が危機に陥れば……
    きっとキュウべぇと契約することを選んでしまう)

さやか「やっぱり『街の人達を守る』ことじゃないかな」

ほむら「美樹さやか?」

さやか「ほら、家族とか、友だち……とかさ」

さやか「お父さんやお母さん、先生やクラスのみんな……仁美や、恭介。みんな、いるしね……」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「……あ! ご、ごぉめんごめん! いきなり暗くなっちゃったね。あたしはもうへーきへーき」

杏子「…………(フン」

ほむら(……そういえば、この時間軸では志筑仁美と上条恭介は付き合い始めたのかしら)

ほむら(美樹さやかの様子を見る限りだとそうなったみたいね……
    魔女化していないとはいえ、このことが後々足を引っ張らなければいいのだけれど)



23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:25:48.40 ID:F4oMipMY0

まどか「うん、わたしもさやかちゃんに賛成。これに意見のあるひと、いますか?」

マミ「ないわ」

杏子「あたしも別に」

ほむら「異論はないわ」

まどか「あとこれはわたしの意見ですけど、『見滝原の街を守る』……のは、優先順位低めでいいと思います。
    どのみち戦ったら壊れちゃうんだと思うし。で、『ワルプルギスの夜を倒す』ことについてですけど」

マミ「鹿目さん、ひとついいかしら」

まどか「なんですか、マミさん?」

マミ「人命を最優先するのは賛成。けれど、私はできれば、ワルプルギスの夜と戦って倒したいと思うの」

ほむら(巴マミ! 余計なことを……!)



24 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:29:12.03 ID:F4oMipMY0

マミ「確かに街の人たちを無事に逃がせれば、無理してまでワルプルギスを倒す必要はなくなるのかもしれない。
   でも、だからこそ、私はここでワルプルギスの夜を倒したいと思うの」

マミ「たとえ見滝原で誰も死なずに済んだとしても、ワルプルギスはまた別の街で同じ事を繰り返すんじゃないかしら。
   今はよくても、いつかは今みたいに対策を練ることもできないまま……
   もしかしたら街を守る魔法少女さえいないまま、取り返しのつかない被害を出してしまう日が来るかもしれない」

マミ「自分が贅沢なことを言っているのは分かっているわ。でも、もしできることなら……」

マミ「ワルプルギスの夜の悲劇をここで終わらせたい。
   見滝原の街も、これからワルプルギスに襲われる沢山の人達も――守りたいの」

まどか「マミさんかっこいい!」

マミ「え? そ、そう?」

まどか「はい! マミさんはかっこいいです! やっぱり正義の味方ですっ!」

マミ「そ、そうかしら?//////」

まどか「そうですよ! えーと、じゃあ第一目標は『街の人達を守る』。第二目標に『ワルプルギスの夜を倒す』。
    『街を守る』はその次ですね……戦ってたら、どのみちちょっとは壊れちゃうし」

マミ「ごめんなさいね、鹿目さん。なんだかわたしのワガママみたいで」

まどか「ウェヒヒ♪ そんなことないですよ~。わたしだってできるなら、ワルプルギスの夜なんてやっつけちゃいたいですし!
    あ、でもマミさん、ぜったいに無理はしちゃだめですよ」

まどか「街を守るためにマミさん達が犠牲になるのなら、そんなのぜったいおかしいですから」



26 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:33:10.12 ID:F4oMipMY0

マミ「ええ。わかってるわ」

杏子「けっ。マミのおひとよしめ」

マミ「嫌だったらみんなは付き合ってくれなくてもいいわ。わたしのわがままだから」

杏子「はいそうですか、じゃああたしはここいらで足抜けするよ。
   ……なんていかねーっつの。最後まで付き合うっつったろ」

杏子「ボソ)……一緒に戦うって約束、したしな。昔」

マミ「ふふ、そうね。ありがとう、佐倉さん」

杏子「……けっ////」

さやか「んん? 杏子ぉ、どうしたぁ? 顔が赤いよ~?」ニヤニヤ

杏子「は!? 何言ってんださやか! んなわけねーし!」

さやか「よしよーし♪ そうだよねぇ、杏子ちゃんはマミさん大好きだもんねぇ。かわいいやつめ~♪」ギューッ♪

杏子「ちげーし! だ、抱きつくなっつの! こら! さやかぁ!//////」

ほむら(……何かしら、この空気)

ほむら「話を続けてもいいかしら」



27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:35:45.40 ID:F4oMipMY0

まどか「あ、うん。ごめんねほむらちゃん、何度も話を遮っちゃって」

ほむら「まどかが気にすることではないわ。それじゃあ気を取り直して……
    ワルプルギスが消えるまでの時間と、これまでの移動経路の統計からして、
    被害が出る可能性があるのはだいたいこの範囲」

さやか「うわ……! けっこう広いね、こりゃ」

マミ「被害の大きさもだけど、ここの……避難所が範囲に含まれてるのが痛いわね。
   見滝原のここ一帯……鹿目さんや美樹さんのご家族も、みんなここに避難するでしょう?」

ほむら「今までの時間軸で確認した限りでは、ワルプルギスがこの避難所近辺を通過するのはほぼ確実よ。
    そうなれば避難した街の人たちが犠牲になる」

まどか「それってこの場所じゃなくて、もっと別のところに避難してもらえば解決しない?
    ワルプルギスのせいでここに被害が出るって、わかってるんだから」

杏子「……そりゃ、言うだけなら簡単だよな(ハァ」

マミ「鹿目さん、確かにわたし達は魔法少女だけど、普通の人たちから見ればただの中学生の女の子よ」

マミ「わたし達が『この避難所は災害で壊れてしまうから、よそに避難しないと危険です』なんて言って、
   聞いてもらえるものかしら」



28 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:39:50.54 ID:F4oMipMY0

さやか「うーん……そうなると、やっぱり逃げるのは無理あるかな。あたし達が頑張るほうが手っ取り早くない?」

まどか「どうしてそんなすぐに諦めちゃうの!」バン!

さやか「ちょ、まどか?」

まどか「そんなんだからさやかちゃんはダメなんだよ! そりゃ上条くんだって仁美ちゃんにとられるよ!!」

さやか「」グサァ

まどか「ううん、仁美ちゃんがいなくたって一緒だよ! 結局他の誰かに取られちゃうよ! そんなんじゃ!」

さやか「イタミナンカカンゼンニケセチャウンダー」パタリ

杏子「さやかぁー!」

さやか「あ……あれ? 胸が痛いよ? その気になれば痛みなんか完全に消せちゃうのに、どうしてかな。
    まだ胸が痛いよ……あはは、涙がとまらないや、どうしてかなぁ?」

杏子「ば、ばかやろう、さやか! 無理して笑うなよ! 痛々しすぎるだろ!
   そんなことするくらいならいっそ素直に泣けよ! あたしの胸なら貸してやるから!」

さやか「き、杏子ぉ……(グスッ」

まどか「でも安心してさやかちゃん! 実は仁美ちゃんは、まだ上条くんに告白してません!」



29 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:42:24.20 ID:F4oMipMY0

さやか「えっ?」

杏子「えっ?」

ほむら「えっ?」

ほむら(え? あれ? そうなの?)

まどか「実はわたし仁美ちゃんに会ってお願いしてきました!
    さやかちゃんは今すごく大変な問題を抱えていて告白どころじゃないから、
    その問題が片付くまで待ってあげてって!」

まどか「仁美ちゃんはワルプルギスが来る翌々日まで待ってくれることになってます!
    仁美ちゃんはおっとりしてるけど任侠みたいに筋を通す女の子だから、まだチャンスあるよさやかちゃん!」

杏子「……その例えはどーなんだ、オイ」

さやか「そ、そう……なんだ……ていうかまどか、そんなことしてたんだ……」

まどか「してたよ!」

さやか「や。ほら、でもあたし、もう死んでるし。ゾンビだし。やっぱり、こんなあたしが告白する資格なんて」

まどか「だからやる前から諦めちゃダメだよさやかちゃん!」バン!



31 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:45:06.03 ID:F4oMipMY0

まどか「そんなんじゃゾンビじゃなくても上条くん取られちゃうよ! 仁美ちゃんに取られちゃうよ!!」

さやか「アタシッテホントバカ」パタリ

杏子「さやかー!?」

杏子「お、おい! もうやめてやってくれよ! お前さやかの親友なんだろ!? こんなのってあんまりじゃねぇか!」

ほむら「そうよまどか、そのくらいでやめてあげて。
    確かに美樹さやかが悶え苦しむ様は痛快だし見ものだと思うけど、
    これ以上彼女を追い詰めたら魔女化してしまうかもしれないわ。それはうざいから、だからやめて」

さやか「お前が一番の敵だああああああああああああ!!」

まどか「わたしが言いたいのはね! やる前から諦めちゃダメってことなの!
    だって魔法少女は夢と希望を叶えるんだから!」

さやか「で、でもさぁ……」

杏子「あ」

杏子「なぁ、あたし今ちょっと思ったんだけどさ」

さやか「あによ」

杏子「ゾンビとかそんなん、言わなきゃばれないんじゃね?」

さやか「」



32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:47:22.94 ID:F4oMipMY0

マミ「佐倉さん、そんな身も蓋もない……」

さやか「そ、そうだよ! それにばれない訳ないよ。死んじゃってたら成長だってしないだろうし……
    いつまでも見た目が変わらないなんて、不気味だよ……」


------------------------------------------------------

恭介「そんな事はないよ!」

中沢「どうしたいきなり」

恭介「むしろ最高じゃないか! いつまでも見た目が若いなんて!」

中沢「キモいこと大声で叫ぶな。つか誰に向かって叫んでるんだお前は」

恭介「えっ……!?」

恭介「………………」

恭介「……さやか……?」

中沢「こんな時に引き合いに出される美樹が哀れでならんよ、俺は」



36 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:50:48.67 ID:F4oMipMY0

------------------------------------------------------

まどか「そんな事心配してるの? それなら大丈夫だよさやかちゃん。マミさんを見て!」

マミ「わたし?(キョトン」

まどか「ベテランのマミさん! マミさんが魔法少女になったのはいつ頃ですか!」

マミ「ええ? ええと……まだぎりぎり小学生の頃ね。それが?」

まどか「してるよ成長! マミさんは魔法少女になってからもきちんと成長してるよ!」

まどか「小学生の頃からあんな立派なおっぱいなんてそんなのないよ!」

まどか「そんなのぜったいおかしいよ!」バーン!

さやか「!」

ほむら「!」ホムッ!

杏子「確かに……言われてみりゃあそうだ!」

マミ「ちょ」

まどか「もしそんなこと言われたらそんなの違うって言い返せるよ! 何度でも言い返せるよ!」

マミ「そこまで!?」



39 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:53:39.21 ID:F4oMipMY0

まどか「傍証も用意するよ! キュウべぇカモン!」

QB「なんだいまどか。僕と契約してくれる気になったのかい?」キュップイ

ほむら「出たわね害獣」チャキ

QB「やあ暁美ほむら。きみは相変わらずだね」

まどか「ほむらちゃんその銃しまって。あのね、わたしキュウべぇに聞きたいことがあるの。
    マミさんのおっぱいは、魔法少女になってからも成長しているの?」

QB「しているよ。長年マミの傍にいた僕が言うんだから間違いない」キュップイ

マミ「キュウべぇ!?」

QB「マミは小さいころから発育のいい子だったけれど、ここ数年の発育は驚くほどだ。
  見た目の変化だけじゃなく、夜に彼女が僕を抱いて眠るときに感じる感触が昔と今では明らかに違うんだ」

QB「彼女の胸がどれほど素晴らしく成長するのか、この僕にもまったく予測がつかない」

マミ「キュウべぇお願いだからもうやめて!!//////」



41 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/29(土) 23:56:47.90 ID:F4oMipMY0

さやか「なるほど……これは納得せざるをえないわー……(ジーッ」

まどか「でしょ?(ジーッ」

杏子「ああ、確かにな……(ジーッ」

マミ「ちょっと……みんな、わたしの胸を見ながら話すのやめてってば!!!//////」

ほむら「……!(ギリッ!」

マミ「暁美さん! どうして涙目で睨んでくるの!?」

ほむら「巴マミ……あなたはどこまで……っ!(グスッ、ヒグッ」

マミ「泣いてる!? 何でガチ泣きなの暁美さん! わたし何か悪いことしたの!?」

まどか「マミさん。時に持てるものは、その存在自体が持たざるものを傷つけることもあるんです」

マミ「えー……?」

まどか「とにかくこれで問題はクリアだよさやかちゃん!」

さやか「え? あー……そ、そうなの、かなぁ?
    ……ていうかほむら放置でいいの? まだ肩震わせて泣いてるんだけど……」

QB「きみ達が見た目のことを問題にするなら、別に気にする必要なんてないと言わせてもらうけどね」



43 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:00:27.16 ID:+SaTNOB50

杏子「オイ、どういうことだよそりゃあ」

QB「そもそも僕は、きみ達がどうしてそんなことを気にしているのかがさっぱり分からないけれど。
  前にも言った通り、今の君達の肉体は外付けのハードウエアだ。
  ソウルジェムさえ無事なら、傷ついてもすぐに魔法ですぐに癒すことができる」

QB「魔法による治癒を応用すれば、ハードウエアの見た目なんていくらでも変えられるさ」

ほむら「!」ホムッ!

さやか「そうなの?」

杏子「ま、別におかしくはねーな。魔法って結構応用利くし」

マミ「そうね。変身魔法というところかしら……魔法少女の古典って感じね」

QB「もちろん、個人ごとの得手不得手はあるけどね」

ほむら「…………」(←自分の胸を見下ろす)

ほむら「…………」ペタペタ

ほむら(……もしかして、私にも希望が?)

ほむら(巴マミほどとまではいかなくてもいい。私だってそこまで贅沢なことは言わないわ。
    でも、せめて、せめて美樹さやかくらいには……!)

QB「暁美ほむら、残念ながら不可能だ。それは因果律そのものに対する反逆だ」

ほむら「どうしてよ!?」



44 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:04:06.00 ID:+SaTNOB50

ほむら「ていうかおもむろに心を読まないでよ! 撃つわよこの淫獣!」

QB「無視)さやか、癒しの祈りで魔法少女になった君の自己治癒力は人一倍だ。
  その力を応用すれば……もし君が望むなら、君はマミのような胸を手にすることだって可能だろうね」

さやか「マジで!?」

ほむら「ハッ!)待ちなさいインキュベーター! そんな事が可能なら、まさか巴マミの胸も実は魔法で……!?」

QB「残念だけどそれは違うね。マミの胸は天然の奇跡さ」

QB「なぜマミ一人だけがこれほどの素質を備えているのか、
  それはぼく達インキュベーターの科学力をもってしても全くわからないことなんだ」

ほむら「っ……巴マミ……あなたは一体どこまで……!(ギリギリギリ」

マミ「あなた達いい加減にしなさーいっ!!!」



46 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:07:59.61 ID:+SaTNOB50

……………………。

まどか「……話が脱線しちゃったね」

ほむら「すっかり取り乱してしまったわ」

マミ「ええ」

杏子「ほんとにな」

さやか「あんなほむら見たのはじめてだよ、あたし」

ほむら「……忘れてちょうだい」

QB「マミ。君は望むなら、マミパイの神にだってなれるかもしれないよ」

マミ「キュウべぇ、お願いだから。せっかく戻った話題をまた脱線させないでちょうだい」

まどか「とにかくわたしは、やる前から諦めちゃだめってことが言いたかったの!」

さやか「分かったよまどか……あたしなんかやる気でてきた!
    ワルプルギスに比べたら、告白なんかなんぼものんじゃーっ!」

まどか「その意気だよさやかちゃん!」



47 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:11:21.90 ID:+SaTNOB50

まどか「あ、でも仁美ちゃん、告白は待ってくれるって言ったけど……」

まどか「『それなら、その日までの間に上条さんと親交を深めておきますわ』とも言ってたよ」

まどか「『幼馴染のさやかさんとの、積み重ねた時間の差を詰めておきますわ』って……」

さやか「はは、それくらいは当然っしょ」

さやか「……仁美にいっぱい我慢させてるんだもん。ちょっとでもハンデない方が、あたしだって気が楽だよ」

まどか「さやかちゃん……(ニコニコ」

さやか「あー……そういや随分話がずれちゃったけど、何の話してたんだっけ、あたしたち」

まどか「あ、そうだね。そろそろ、そもそもの部分に話を戻すね」

まどか「わたし、思うんだ。
    ほむらちゃんが何度やっても勝てなかったっていうワルプルギスに勝つ方法を考えるのと、
    街のみんなを避難させる方法を考えるのだったら、避難の方がよっぽど簡単じゃないかなって」

マミ「着眼点はともかく、一概にそうとは言えないわね」

まどか「そうですか?」



49 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:14:34.18 ID:+SaTNOB50

マミ「まず地方自治法上、『市』と呼ばれるための最低人口は原則として五万人以上ね」

マミ「一度『市』として認められれば人口の減少で条件が満たせなくなった場合も市のままだったり
   するみたいだけど、見滝原市は大きな街だわ」

マミ「たとえば県内で一番人口が多いのは県庁所在地の前橋市で約30万人、
   次が高崎市でだいたい24~25万人というところらしいけど……」(※見滝原市を群馬県内としました)

マミ「詳細は教科書なり地図帳なり……インターネットなりで調べないとわからないけれど。
   この辺りの数から推定して、見滝原にも十万人単位の人が住んでいると考えて間違い無いと思うわ」

さやか「マミさん詳しいですね」

マミ「ありがとう。でも小学校の社会科で習ったのを覚えていただけよ」

ほむら「その全てを市外に移動させる必要はないにせよ、それで問題が解決するわけではないわ」

ほむら「ワルプルギスの夜が壊滅的な被害を齎すことを知っているのは私達だけ。
    その危機を理解できるのも魔法少女だけ……普通の人達に危険を説いて対策を取らせるのは、まず不可能」

ほむら「巴マミも言ったように、私達は魔法少女ということを除けばただの女子中学生よ。根拠も薄弱。
    説得は困難を極めるでしょうね」

まどか「それこそ、魔法を使ったらどうかな?」

まどか「何もそこだけ正攻法で考える必要なんか、ないんじゃないかなって」



52 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:17:25.68 ID:+SaTNOB50

マミ「魔法……ねぇ」

さやか「あ」

杏子「ん?」

さやか「杏子の魔法はどう? 確か幻術とか幻惑の魔法が使えるんだよね」

杏子「ん? ああ……」

杏子「確かに今は、そいつもちっとは使えるけど……おいちょっと待てオマエ、それ誰から訊いたんだ」

さやか「マミさんから」

まどか「あ。わたしも聞いたよ」

まどか「これから一緒に戦うんだもん。どんなことができるか知っておきたいなって」

杏子「……なんか嫌な予感すんだけど」

まどか「ロッソ・ファンタズマ!」ビシッ

杏子「やめろおおおおおおお!//////」

さやか「ロッソ・ファンタズマ!」シュバッ

杏子「うるせー黙ればーか!! マミも何でバラしてんだよコラぁ!!」



54 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:21:16.74 ID:+SaTNOB50

マミ「ええ? だってかっこいいじゃない。ロッソ・ファンタズマ」

まどか「そうだよぉ。とってもかっこいいのになぁ(ウェヒヒッ」

さやか「ねー。かっこいいのにねぇ(ニシシッ」

杏子「さやかぁ! てめえだけは本気でそんなこと思ってないだろ絶対! あたしをからかってるだけだろちくしょー!」

まどか「杏子ちゃんの幻術を使えば、街のひとを見滝原の外に避難させるのもきっとできるって思うの。どうかな?」

ほむら「確かに杏子の幻術があれば、街の人を操って安全圏に移動させることは可能かもしれないわね。
    でも、まどか、そのために必要な魔力を、あなたはどこから持ってくるつもりなの?」

ほむら「見滝原の全人口を移動させる必要はないとしても……
    その何分の一としても、数千、あるいは万単位にまで達するオーダーよ。
    その全てを操る杏子の負担は並大抵のものではないわ」

ほむら「まどか、あなたは優しすぎる。でもその優しさが常に正しい決断を生むわけではないの。
    ……あなたの提案は認められないわ」

まどか「ほむらちゃん。ほむらちゃんって実はおばかさんなの?」

ほむら「ほむ!?」

まどか「わたしだってそれくらい考えてるよ。
    それともわたし、もしかしてほむらちゃんにバカだって思われてるの?」

ほむら「ほむむ!?」



56 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:26:23.17 ID:+SaTNOB50

まどか「何も街中のひとを操らなくたっていいと思うの。
    操らなきゃいけないのは、みんなを『避難させるひと』のほうじゃないかな?」

さやか「あ」ポン

マミ「なるほどね。市役所、警察、消防……」

マミ「街中のおまわりさんや消防士さんを操るのは無理でしょうけど、指揮を取ってる場所だけなら、もしかしたら」

さやか「そっかぁ。それなら数はかなり減るね」

杏子「んな思い通りにいくかねぇ? 確かにあたしの固有魔法は幻術やら幻惑やらだけど、
   自由自在に操れるってワケじゃねーんだぞ?」

まどか「どういうこと?」

杏子「台風が来て危険デスって言われて、あんたまず街の外に逃げようって思うかよ?
   要はそういうことさ。あたしが見せた幻でどう判断してどう行動するかは、そいつ次第ってこと」

杏子「見せ方次第ってのはあるけどさ。多分あんたが思うほど便利なもんじゃないよ」

まどか「うーん、いい考えだと思ったのになぁ…‥ダメかぁ」

マミ「いいえ、鹿目さんの発想は間違ってないと思うわ。後は使い方ね」

さやか「ワルプルギスの進路を変えられればいいんだけどねぇ」

まどか「さやかちゃん、そうじゃないよ。今はそれができなかった時のための話をしてるんだよ……」



58 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:30:51.54 ID:+SaTNOB50

まどか「わたしね、背水の陣を敷いていいのは他に方法がないときだけだと思うの。
    退路を確保するのは臆病でも卑怯でもないよ」

まどか「プロの軍隊だって、全体の二割に被害が出たら撤退に入るんだっていうよ?
    三割も被害が出たら、もし勝てても被害は『全滅』扱いなんだって……」

ほむら(まどか、あなたどうしてそんな知識を持ってるの……?)

まどか「わたし達に当てはめたらどう? 魔法少女は四人しかいないんだよ?
    ここにいる一人でも欠けちゃったら、『全滅』したのとほとんど同じなんだよ?」

まどか「もし誰か一人でもいなくなっちゃったら……そんなの、勝てなかったのと変わらないよ」

まどか「何か……ないかなぁ。避難の方法……(ムー」

ほむら(……なんだか今日のまどかはおかしい。というより、この時間軸のまどかがおかしいの?)

まどか「うーん……」

ほむら(でも)

まどか「むー……」

ほむら(悩んでるまどかも魅力的だわ)ホムホム



まどか「……爆破しちゃおっか。避難所」

ほむら「まどかぁー!?」ホムガーン!!



60 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:34:23.89 ID:+SaTNOB50

さやか「ま、まどか! あんたなんてことを!」

まどか「えー? だって」

ほむら「だってじゃないわまどか! 癪だけど今回は私も美樹さやかと同意見よ!」

さやか「この期に及んでどんだけあたしが嫌いなんだあんたは!」

ほむら「そんな些細なことは後にしてちょうだい! まどか、自棄を起こしてはいけないわ!」

まどか「べつに自棄なんて起こしてないんだけどなぁ」

まどか「だってこの避難所があるから、みんなここに避難するんでしょ?
    その場所がなくなったら、みんな他の場所に行かざるを得ないよね。ほら問題解決」

まどか「どうせワルプルギスの夜を防げなかったら壊れちゃう場所だもん。
    わたし達がちょっと早めにティロフィナーレしちゃったって問題ないよね」

ほむら(私の知ってるまどかじゃない)

マミ「過激だけど……一理はある気もしてきたわ」

ほむら「巴マミ!? あなたまで!」

マミ「でも、そんな事をして本当に大丈夫? 避難誘導が混乱して、逃げる前にワルプルギスの夜が……なんてことも」

まどか「それはわたしも考えましたけど……でも、避難の時間を稼ぐだけなら実は簡単だと思うんです」



61 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:38:20.20 ID:+SaTNOB50

さやか「どういうこと?」

まどか「だから、そこで杏子ちゃんの幻術だよ」

まどか「たとえばスーパーセルが現れた時、最初に気づいて、避難を訴えるのは」

杏子「――観測所か!」

まどか「正解!」

まどか「これなら『何を見せればいいか』も、『見せた結果どんな行動をするか』も予測しやすいよね。
    あまり何もない時間が続くと避難命令が解除されちゃうかもしれないからそんなに長い時間は無理だけど、
    多分、一日くらいは時間を稼げると思うんだ」

まどか「ほむらちゃん、ワルプルギスが現れる前の何日かの天気って、統計で分かるかな?」

ほむら「統計は取ってないけれど……記憶頼みでよければ、曇りか雨が多かったような」

マミ「成程。それなら無理は少なそうね……」

まどか「もちろん、これだけじゃ安全策とは言えません。
    爆破したらこういうことが起こる――って推測は立ちますけど、
    もしかしたら全然違うことが起こるかもしれません」



62 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:40:38.03 ID:+SaTNOB50

まどか「時間は稼げてもマミさんが言っていた問題は解決できなくて、
    余計な危険を増やすだけかもしれません」

まどか「確かに魔法少女にできることは限界があって、
    警察や消防や、市役所の人たちを信用するしかないのかもしれません」

まどか「でも、もし本当にやるからにはできればもうひと押し……確定できる材料があるといいんですけど」

マミ「うーん……そうねえ」

ほむら「………………」

ほむら(……あ)

ほむら(材料……は、ある。
    いいえ、材料どころか、まどかが求める条件を完全に満たせる魔法少女が、一人いる……)

ほむら(美国織莉子……)



64 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:43:49.17 ID:+SaTNOB50

ほむら(おそらく彼女の未来予知なら、爆破の結果を予測できる。
    それどころか、『どうすれば見滝原の住人を安全圏に避難させられるか』を、予知という形で
    完全にシミュレーションできる)

ほむら(けれど……!)

まどか「ほむらちゃん、何か心当たりがあるって顔だね?(ニッコリ」

ほむら「ほむ!?」

まどか「もし知ってることがあるなら、わたしにも教えてほしいなって(ニコニコ」

ほむら「まどか、でも」

まどか「教えてほしいなって♪(ニコニコ」

ほむら「まどか、それは」

まどか「ほむらちゃん♪(ニコニコ」

ほむら「……あぅ」

まどか「♪」



65 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:46:44.37 ID:+SaTNOB50

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まどか「美国織莉子ちゃん……予知能力を持ってる魔法少女かぁ」

ほむら「……今日のまどかは怖いわ」

さやか「いやー、やっぱりまどかもあのママさんの娘だったってことかねぇ」

ほむら「それで納得していいの?」

マミ「そんな子がいてくれれば確かに心強いけれど……
   だとしたら、暁美さんが今まで黙っていたのはどうしてなのかしら?」

ほむら「……彼女はあなた達とは違う。どの時間軸でも必ず現れる魔法少女という訳ではなかった」

ほむら「それに彼女とその仲間は、他の魔法少女を殺してまわっていた"魔法少女狩り"らしいの。危険な連中よ」

マミ「らしい?」

ほむら「伝聞なの。私が直接"魔法少女狩り"の現場を見た訳ではないから」

ほむら(……あなたに教えてもらったのよ、巴マミ)



69 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:51:10.81 ID:+SaTNOB50

杏子「けどそんな話、今まで聞いたことねーぞ?」

ほむら「言ったでしょう? 必ず現れる魔法少女ではなかったの。
    美樹さやかのように魔法少女として契約した時間軸としなかった時間軸があるのか、
    それとも行動を起こす何らかのきっかけがあるのか……私もそこまではわからないけれど」

まどか「でも、もしいてくれたらとっても助かっちゃうよね。
    計画が上手くいくかいかないか、事前にぜんぶわかっちゃうんだもん」

まどか「ね、ほむらちゃん」

ほむら「ダメよ」

ほむら「どうせ彼女たちを味方に引き入れたいとでも言うのでしょう。
    馬鹿なことを考えないで。あいつらは危険な魔法少女よ」

ほむら(そう……彼女達は、まどかを殺した。あんなイレギュラーは加えるべきじゃない)

まどか「ほむらちゃん、そうとは限らないよ」

まどか「さやかちゃんと杏子ちゃんがはじめて会ったばかりの頃のこと思い出してみてよ。
    さやかちゃん、最初は杏子ちゃんのこと悪い魔法少女だって思ってたんだよ?」

さやか「いや、最初会った頃の杏子って普通に悪い魔法少女じゃなかった?」

杏子「今更否定はしねーけど、面と向かって言われるとフクザツだな」

さやか「今は正義の魔法少女だけどさ」

杏子「ぐ。べ、べつに正義じゃねーし……///」



72 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:54:07.68 ID:+SaTNOB50

さやか「あはは。照れてら♪」

まどか「ウェヒヒ♪」

まどか「ねぇ、ほむらちゃん。わたしだってほむらちゃんが誤解してるだなんて思ってない。
    でも、その織莉子ちゃんも……そういうことってない?」

ほむら「………………」

ほむら「確かに、グリーフシードだけを目的にして魔女の被害を顧みなかった……
    人間を使い魔のエサとまで言い切った杏子の態度は、
    美樹さやかが言うような『悪い魔法少女』のそれと言えないこともないわ」

ほむら「けれど、それは魔法少女としてごくありふれたスタンスの一つでしかないわ。
    杏子の場合、ただ言動が他の魔法少女よりも露悪的だったというだけ。
    ……彼女たちのやったことは、杏子のそれとは訳が違う」

ほむら「私の知る彼女達は、自分達の目的の為なら手段を選ばない。
    何人もの魔法少女を殺害し……さらには見滝原中学校を襲撃し、生徒を無差別に殺すことさえした」

ほむら「まどか、あなたはそんな危険な連中と手を組もうと言うの? 馬鹿も休み休み言ってちょうだい」

まどか「ほむらちゃん……」



73 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 00:56:16.22 ID:+SaTNOB50

さやか「ねえ、まどか。ほむらの言う事が本当だったら、そいつらめちゃくちゃヤバイ連中じゃん。
    あたしだってそんなのとは組めないし、組みたくないよ」

ほむら(……よし、美樹さやかが乗ってきた)

ほむら(彼女の無闇な潔癖さには散々悩まされてきたけれど、今の場面では役に立つ)

ほむら「別に疑ってくれても構わないけれど、美国織莉子に関する情報は全て本当のことよ」

マミ「…………」

杏子「…………」

ほむら(巴マミも杏子も乗り気じゃない。それはそうよね)

ほむら(巴マミは正義の味方を自認しているし、杏子も今は心情的に美樹さやかや巴マミ寄り……
    二人への負い目を抜きにしても、美国織莉子の所業を擁護はできないでしょう)

ほむら「……挙句その時間軸では、まどか、あなたはその美国織莉子に殺されているのよ」

ほむら「彼女たちの狙いは、あなたの殺害だった。そんな危険な連中を私は信用出来ない。
    お願いだから聞き分けて。私はまどかを守りたいの」

ほむら(あの時間軸では、まどかも美樹さやかも魔法少女にならなかった。巴マミも杏子も絶望を乗り越えた。
    杏子達と力を合わせて、ワルプルギスの夜を越えることさえ信じられた――なのに)
 
ほむら(まどかを死なせて、その全てを台無しにしたのが美国織莉子――!)

ほむら(ようやくワルプルギスの夜を越えられそうなこの時に、余計な邪魔者を入れてたまるものですか!)



75 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:00:43.32 ID:+SaTNOB50

まどか「………………」

まどか「ほむらちゃん、こんな時に言うのもなんだけど」

ほむら「なに? まどか」

まどか「実はわたし前々から思ってたんだけど……
    そういうのって、ほむらちゃんの一番よくないところだと思うの」

ほむら「ほむー!?」ホムガーン!

さやか「え。ええ!? いや、ちょっと待ってよまどか!
    今の話って別に、ほむらに悪いところなくない!?」

まどか「あ。ええとね、今の話がどうっていうのとはちょっと違うの。そっちじゃなくて……うーん」

まどか「ほむらちゃん。何度も言ってくれたよね、わたしのこと守るって。
    わたしね、そのことはとっても嬉しい。でも」

まどか「なんで、わたしだけなの?」

ほむら「………………」

まどか「ほむらちゃんわたしに言ったよね、家族や友達のこと大切かって。
    わたしはみんなのこと大切だよって答えた」

まどか「その家族や友達や、大切なみんなが危ないのを分かってて……
    なのにわたし一人だけ守ってもらえても、わたしぜんぜん嬉しくない」



76 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:04:13.06 ID:+SaTNOB50

さやか「ちょっと、まどか」

まどか「お願い、止めないでさやかちゃん。わたしだってほむらちゃんにひどいこと言ってるのわかってる。でも」

ほむら(…………まどか)

ほむら(初めて美国織莉子が現れた時間軸でも、あなたは同じ事を言った。
    あなたはいつもそう。いつも周りのことばかりで、自分のことをちっとも顧みようとしない……)

ほむら「私だって万能じゃない。すべてを救うなんてできない――」

まどか「知ってる。それでもわたし、みんなのこと守りたいから。だから今、考えてるの。
    少しでもたくさん、みんなを助けられる方法を、可能性を考えたいの」

ほむら「まどか……」

まどか「第一、わたしのことを守りたかったって言うなら、ほむらちゃん」


まどか「どうして最初の願い事が、わたしとの『出会いをやりなおしたい』なの?」


ほむら「………………」

ほむら「えっ?」



79 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:07:36.91 ID:+SaTNOB50

まどか「だから、どうしてそこで、過去に戻ろうなんて考えたの?」

ほむら「どうしてって……それは、あなたを守りたくて」

まどか「ほむらちゃんが仲良くなったのは、ほむらちゃんから見て『最初の時間軸』のわたしだよね?」

まどか「その話を聞いた時からずーっと不思議だったの。
    何で素直に『最初の時間軸』のわたし達を助けなかったのかなって」

まどか「そもそも最初に『ワルプルギスのせいで死んだひとや壊れたものを元通りに戻したい』って祈っていたら、
    わたしに因果が集まることもなかったし、今みたいにややこしいことにもならなかったし」

まどか「ほむらちゃんが何度もわたし達との出会いをやりなおす必要ももなかったし、
    つらい思いすることもなくって済んだんじゃないのかなって」

ほむら「!?」ホムガーン!!

ほむら「で、でも……それじゃ結局、みんないずれ魔女に」

まどか「それ最初から知っててそうした訳じゃないよね。結果論でそうなっただけだよね?」バッサリ

ほむら「」



81 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:09:45.08 ID:+SaTNOB50

まどか「ていうか、ほむらちゃんにとってはここって沢山ある平行世界の一つかもしれないけどさ。
    時間ループなんかできないわたし達にとっては『今』のわたし達が全てなんだよね」

ほむら「!!!!?」ホムガガーン!!!

まどか「今更言っても仕方ないけどね。
    でももしさっき言った祈りで魔法少女になってたら、最初の時間軸のマミさんやわたしや
    ワルプルギスのせいで死んじゃったひとは生き返って街も元通りになって、
    ほむらちゃんだって最初の時間軸のマミさんやわたしと一緒に魔法少女できて……」

まどか「あ。あと、癒しの祈り的なアレで魔法少女になって胸をおっきくしたりできたんじゃないかな?」

ほむら「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ホムガガガガーン!!!

ほむら「」パタリ

さやか「ほむらが倒れたー!?」

マミ(今、最後の一言で一番ダメージ受けてたような……?)



83 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:13:17.06 ID:+SaTNOB50

まどか「あとこれも、ほむらちゃんの話聞いた時からずーっと気になってたんだけど」

ほむら「ま、まだ何かあるの……」ヨロヨロ

まどか「何でマミさんは放置なの? わたしだけじゃなくて、マミさんにもいっぱいお世話になったんだよね?」

ほむら「えっ?」キョトン

ほむら「それは……あれ? その、だって巴さんは、もう魔法少女だし」

杏子「あー。そっか、そういうことか」

さやか「何が?」

杏子「ほむらの話、最初聞いた時からなーんか足りない気がして引っかかってたんだ。やっとわかった」

さやか「だから何が?」

杏子「最初の時間軸だとマミも出てくるのに、気がついたら全然話に出てこなくなってんだよな。まどかばっかりで」

さやか「ん?……あ、言われてみれば確かにそうだったかも」

ほむら「そ、それは」

まどか「……もしかしてほむらちゃん、マミさんのこと忘れてた?」

ほむら「違っ……!」



88 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:18:52.80 ID:+SaTNOB50

ほむら(そ、それは、巴さんには一度殺されかかったからで……!
    でも、あれ? 私の願いって『鹿目さんとの出会いをやり直したい』だったよね?
    もしかして最初から? でも、それは、私にとって一番大事なのはまどかで、別に、
    だけどそんな事言ってもまどかは絶対この願いの内容にツッコミ入れてくるだろうし、あれ?
    私。あれ? あれ? あれっ!?)オロオロ

まどか「……だとしたら、それはちょっと、あんまりな気がするなって」

杏子「さすがのあたしもそれは引くわー」

ほむら「ちょっとぉ!?」

ほむら「そ、そうじゃな……っ、私だってできるものなら……でも、そんな、私、えと」オロオロオロオロ

ほむら「ち、違うんです巴さん! 違うんですっ! ほんとに違うのー!」

杏子「なあマミ、マミからはなんか言う事ねーのか?」

マミ「え? あ……ううん、わたしは別に」

杏子「ほんとかー? 言いたいことあるなら言っといた方がいいんじゃね?
   ほら、訳知り顔でクールぶってて鼻持ちならねえとかさ」

ほむら「それはあなたが私に言いたいことじゃないの!? 私そんな風に思われてたの!?」



90 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:21:35.43 ID:+SaTNOB50

さやか「………………(フムー」

さやか「あのさあ、まどか。ちょっと」

まどか「なあに? さやかちゃん」

さやか「うーん……」

さやか「まどかの言う事もわかるけどさー……
    いや、ほむらが七転八倒してるのはぶっちゃけいい気味だし見ものって感じだけど」

ほむら「くっ……!(ギリギリギリギリ」

さやか「でも……なんだろうね、今のはいくらなんでもほむらのこと悪く言い過ぎっていうか」

さやか「ほむらのこと、いじめすぎじゃない? ほら、ソウルジェムの色も結構ひどいことになってるし」

ほむら「……美樹、さやか?」

マミ「そうね」

マミ「鹿目さんは暁美さんの言ったことを結果論だって切り捨てたけれど、
   鹿目さんが言っていることだって同じ結果論でしかないわ」

マミ「理屈は通っているけれど、今ここで言っても仕方のないことよ」



92 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:23:58.18 ID:+SaTNOB50

まどか「それはそうですけど」

マミ「わたしね、思うの。
   ただ一度きりの奇跡をほんとうに上手に使えるひとって、とても少ないんじゃないかしら」

マミ「何か選ぶ余裕なんかなくて、目の前のことにとらわれたままで、
   どうしようもなく奇跡を使いきってしまうかもしれない」

杏子「………………」

マミ「どれだけ慎重に考えて、いい考えだと思っても、
   後になってみたら本当はもっと別の願い方があったんだって気づくかもしれない」

さやか「……………」

マミ「……でも、そんなのはきっと、とてもありふれた事だわ」

さやか「ですよねー。あたしも正直、ちょっとは失敗したかなーって思いますもん(アハハッ」

マミ「わたしだって、これから奇跡を祈る子がいるのなら、よく考えて、後悔のないように奇跡を使ってほしいわ」

マミ「でも、そうできなかったことは……責められるべきことなのかしら」

マミ「奇跡を祈ったその人以外が、声高に責め立ててもいいことなのかしら……」

マミ「ましてその時の暁美さんは、大切な友達の鹿目さんを亡くしたばかりだったのよ?
   冷静に、慎重に考えれば……なんて、そんなのは土台無理な話じゃないかしら」

マミ「それだけ暁美さんには、鹿目さんが大事だったってことじゃないかしら」



94 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:27:49.42 ID:+SaTNOB50

ほむら「巴さん……」

杏子「いいのかぁ? そんなんで。ないがしろにされてんのお前だぞ?」

マミ「それは、まあ、確かに寂しいけれど。でも暁美さんも鹿目さんもわたしの大事な後輩だから」

マミ「後輩同士が仲良しなのは喜ばしいことでこそあれ、文句を言うようなことじゃないわ。違う?」

杏子「……すげえな、おい。女神さまがいるぞ」ヤレヤレ

ほむら「ともえ、さん……(グスッ」

マミ「ずっと大変だったわね、暁美さん。
   でももう大丈夫。少なくともこの時間軸のわたし達は、みんなあなたの味方だから。ね?」

ほむら「巴さぁぁぁぁぁんっ!!(ワァァァァン!」ダキッ

ほむら「ご、ごめんなさいっ……ごめん、なさいっ! 巴さぁんっ! 私っ……わっ、私ぃ……っ!」

マミ「うん、いいの。もういいから、ね?」ギュッ

ほむら「わ、わたし……私っ……私、だって……!」

ほむら「私だってできるものなら、みんなのことも助けたかったっ!
    全部のことをうまくやって、みんなで笑えるようにしたかったっ! ひっく……
    仲良しになって、一緒にっ……お喋りしたり、お買い物したり、お茶会したりしたかった……!」



96 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:30:06.96 ID:+SaTNOB50

ほむら「でも、でも私ぜんぜんダメで……!
    みんな魔女になったり、死んじゃったり、ひどい時には仲間割れまで……!
    仲良くなっても時間を戻したらまた他人で! そのたびに他人を見る目で見られるのが、つらくて……
    自分で祈ってそうしたことなのに、でも、また仲良くなりなおすのが、辛くて……!
    だから私、せめてまどかだけはって。まどかは私の初めての友達だったから、まどかとの約束だけはって!
    何度もっ、ずっと……辛かっ……辛かったあぁぁぁぁぁ!!」

マミ「うん。うん。辛かったわね。もう大丈夫」ナデナデ

杏子「……あんなほむら、初めて見るな(チョットウラヤマシイナ」

さやか「きっといろいろためこんでたんだね、今まで」

まどか「仲良しってステキだね(ウェヒヒ♪」

さやか「今のまどかに言われてもちょっと素直に頷き難いなぁー、それ」

まどか「さやかちゃん何か言った?(ウェヒヒ♪」

さやか「いや、なんにも(苦笑」



98 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:33:07.69 ID:+SaTNOB50

………………

ほむら「…………(グスッ」

マミ「落ち着いた?」

ほむら「はい……もう大丈夫です」

まどか「ほむらちゃん、会議、まだ続けられそう? 無理ならまた今度でも」

ほむら「ううん……続けよ。時間、ないし」

まどか「……ごめんね、ほむらちゃん。さっきは、わたしひどいこと言った」

ほむら「そんなことない、それは、確かにかなりへこんだけど……。
    でも、おかげで今まで辛かった分いっぱい泣けたし、いろいろ吹っ切れたし……
    ……恥ずかしいところも、見せちゃったけど///」

ほむら「この時間軸……ぜったいなくしたくないから。だから私、がんばる」

さやか「棘が抜けたらすっかり可愛くなっちゃってまあ! デレ期か? デレ期なのかっ!
    今のほむらなら嫁にしたいぞっ、あたしはー!」

ほむら「それは御免こうむるわ」ホムッ

さやか「結局あたしにはその態度かッ!」

ほむら「ふふっ……冗談よ、美樹さん(クス」

まどか「ウェヒヒ♪」



99 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:36:12.72 ID:+SaTNOB50

杏子「なぁ、マミ(ボソボソ」

マミ「なに? 佐倉さん」

杏子「いーのかよこれで。オマエ結局丸損っぽいぞ?(ボソボソ」

マミ「いいのよ、これで」

マミ「暁美さんがあんな顔見せてくれるようになったんだもの。
   どこかも分からない、覚えてもいない並行世界の出来事と引き換えなら、丸損どころか貰いすぎなくらいだわ」

杏子「そういう意味じゃねーって……あーもうこのお人好し」

杏子「世の中いいやつばっかじゃねーんだぞ? 悪いやつだっていっぱいいんだぞ?」

杏子「そんな調子で世の中渡って、いつか悪いやつに痛い目見せられてもしらねーぞ。ったく」

マミ「心配してくれてるの?」

杏子「なっ//////」



100 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:38:23.75 ID:+SaTNOB50

マミ「ありがとう、佐倉さん(ニコ」

杏子「ち、ちげーし! 何を頭のあったかいこと言ってんだよ! つーか……マミっ、あたしの話全っ然わかってないだろ!」

ほむら「どうしたんですか?」

マミ「どうもしてないわ。佐倉さんがわたしの心配をしてくれただけ」

杏子「んなっ!?//////」

まどか「ウェヒヒ♪ 杏子ちゃんってば優しいんだ」

杏子「ちげーってば! あたしはただマミのやつがお人好しすぎっから、世の中の常識ってもんをだなぁ!」

さやか「おやぁ~? ほむらに続いて杏子までデレ期到来ですカナ?(ニヤニヤ」

杏子「なんだよさやかその顔! うぜー! ちょーうぜーっ!」

まどか「それじゃあ、雨降って地固まったところで、話を続けよっか」

さやか「雨降らせたのまどかだけどねー」

杏子「おい聞けよ無視すんなよ!」

さやか「はーい、杏子すとっぷ、すとーっぷ」ギューッ

杏子「もがっ!? むー、むーっ!」ジタバタジタバタ



102 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 01:41:32.36 ID:+SaTNOB50

まどか「えーと……確か、織莉子ちゃんに仲間になってもらえるようにするかどうか……だっけ」

ほむら「……私は、やっぱり危険だと思う」

杏子「ぷはっ……まあ、そうだな。ほむらの私見は置くとしても、ヤバい連中っぽいのは変わらねーし」

マミ「でも、"この世界"ではまだ、"魔法少女狩り"なんてものは起こっていないわ。
   少なくともわたし達は、それを知らない」

さやか「どういうことだろ? あたし達の目につかないところで起こってるってだけ?」

まどか「わかんないけど……もしかしたら、必要なくなったのかも」

杏子「どーいうことだ?」

まどか「ほむらちゃんがさっき、織莉子ちゃんのことを『目的の為なら手段を選ばない』って言ったよね」

まどか「確かに織莉子ちゃん達はそういう人達かもしれないけれど、
    だからこそ、逆に目的のために必要ないことまでは、わざわざやったりしないんじゃないかと思うの」

ほむら「魔法少女狩りが不要になったということ?」

まどか「うん。推測……って言えるほどちゃんとしたことでもないけど」

まどか「でも……もしそうだったなら、目的さえぶつからなかったら、協力だってできるかも」



105 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 02:01:05.30 ID:+SaTNOB50

まどか「ほむらちゃん。織莉子ちゃんがどこに住んでるか、知ってる?」

ほむら「……調べたことはあるわ」

ほむら「でも危険すぎる。彼女たちの目的はまどかを殺すことだった。
    そんな連中のところにまどかが行くべきじゃない。行くなら私が行く」

まどか「織莉子ちゃんとの交渉にはわたしが行くよ。わたしが言い出したことだから、これくらいはしたい。
    でももちろん一人でなんか行かない。ほむらちゃんにも一緒に来てほしいの」

ほむら「ま、まどか……(ジーン」

まどか「あと、さやかちゃんと杏子ちゃんも一緒に来て。交渉にはこの四人で行くよ」

ほむら(えー)

さやか「わお、露骨に不満そう」

ほむら「だって、せっかくまどかが私のこと頼ってくれたと思ったのに……」

まどか「もちろん頼りにしてるよ、ほむらちゃん(ウェヒヒ」



7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 11:59:51.24 ID:+SaTNOB50

マミ「……あの、鹿目さん。わたしは?」

まどか「実はマミさんには、別にやってもらいたいことがあるんです」

マミ「えー? わたしだけー……?」ムー

さやか「マミさんが拗ねてる」

杏子「先輩の威厳も何もあったもんじゃねーな、おい」

マミ「……だって」

まどか「マミさんにしか頼めないんです。その……(チラ」

さやか「ん?」

ほむら「?」

マミ「……ああ、それで。わかった。なんとかやってみるわ」

まどか「ありがとうございます、マミさんっ!」

マミ「どういたしまして。……さて、今日はもう時間も遅いし、そろそろお開きかしらね」

まどか「わっ! もうこんな時間!? えと、それじゃあ今日は解散?……明日は、織莉子ちゃんとの話し合いね!」



10 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:04:28.11 ID:+SaTNOB50

――翌日 見滝原市内某所

杏子「おーす」

さやか「杏子おそーい!」

杏子「ええ? んなことねーって。時間ぴったりだろ」

ほむら「残念。10分遅刻よ」

さやか「ほらみろー」

杏子「えー? マジかよー……その時計進んでねぇか?」

まどか「ウェヒヒ♪ じゃ、みんなそろったし、行こっか」

…………………………。

杏子「……マミのやつ、きっとまだ拗ねてんだろーなー」

さやか「えー? そりゃないでしょ。マミさんだよ?」

杏子「マミだからさ。今度からよーく見とけ。気を抜いてる時のマミは結構へちょいから。さびしんぼだから。
   ぜってーまだ拗ねてる。わたしだけ仲間はずれだわーってべそかいてる」

さやか「えー? さすがにそりゃないでしょ、さすがに。っていうかそれほんとだったらさー……」



11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:07:33.85 ID:+SaTNOB50

さやか「美人で優雅で大人っぽくてお姉さんキャラ! でも実はさびしんぼで甘えんぼ!
    ってそれ一体どんだけなの!? 全部乗せなの!? うわぁ、これが萌えかっ、萌えなのかーっ!」

杏子「いや、何言ってんださやか……」

ほむら「杏子はよく見てるわね……(まあ、言われてみればそんな気配はあったけど)」

さやか「愛か! 愛なのか杏子ー!」

杏子「ちげーよ! ただ、あたしはマミとの付き合い長いからさ……(ゴニョゴニョ」


ほむら「……ねえ、まどか。どうして今になって巴さんだけ別行動なの?
    杏子がさっき言ったことじゃないけれど、なんだか巴さんだけ仲間はずれみたいで心苦しいというか……
    拗ねるかどうかはわからないけど、きっと寂しがるとは思うの」

さやか(ほむらはすっかりデレ期だなぁ)ホノボノ

杏子(まさかこいつの口からこんな台詞が出るとはなぁ……)シミジミ

まどか「う、うーん……そんなつもりじゃなかったんだけど……」

まどか「ワルプルギスの夜まであんまり時間ないから、時間節約した方がいいかなって思って……
    ……あと、わたし達の中だったら、ああいうのはマミさんが一番向いてるかなって」

さやか「どゆこと?」

まどか「ええとね、わたし達が他の魔法少女に協力してって呼びかけても、信用してもらえないと思うんだ」



13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:11:52.74 ID:+SaTNOB50

さやか「……ごめんわかんない。もっと具体的にお願い」

まどか「たとえばさやかちゃんは、魔法少女になったばかりだよね」

まどか「そんなよく分からないひとから『ワルプルギスの夜から見滝原のみんなを守るから協力して』って
    頼まれても、なんだか不安な感じしない?
    なりたての魔法少女にそんなことができるのかなって、みんな不安になっちゃうんじゃないかな」

さやか「正直フクザツだけど……まあ、そうかも」

まどか「ほむらちゃんはベテランだけど謎がいっぱいだし」

ほむら「私の場合はベテランといっても、ループを繰り返しているせいだものね」

まどか「で、そもそも魔法少女にもなってないわたしじゃお話もできそうにないよね」

さやか「杏子は? 魔法少女でベテランだし、ほむらみたいな謎の新キャラでもないし」

まどか「……すごく言いにくいんだけど、今まで杏子ちゃんがやってきたっていうことを考えると、ちょっと」

まどか「……今の杏子ちゃんがどういうひとか知ってるのはわたし達だけだし。
    そんな杏子ちゃんがマミさんと一緒に呼びかけにあたってたら、
    『どっちがどっち側についたのか?』って風になるんじゃないかな。
    そんなつもりは全然ないのに、マミさんにまで何か裏があるって思われちゃうかもしれないなって」

杏子「ま、否定はしねぇよ」

まどか「うん。ごめんね杏子ちゃん……とにかくそういう感じだから、ベテランで、正義の魔法少女で、
    その実績もあるマミさんが一人でやるのが、一番イメージがいいかなって思ったの」



15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:15:53.32 ID:+SaTNOB50

ほむら「まどか。水を差すようだけど、それは逆なんじゃないかしら?」

ほむら「普通の魔法少女はむしろ杏子の方に近いわ。巴さんじゃ逆に信用されない。
    それどころか魔女になる前の使い魔まで狩り続けていた巴さんは、近隣の魔法少女から恨みを
    持たれている可能性すらある」

ほむら「人数が欲しいなら、いっそワルプルギスの夜のグリーフシードか何かを賞品に交渉して、
    多数派の魔法少女の方を味方した方がいいように思うのだけど」

まどか「うん。ほむらちゃんの言うことは分かるよ。だけど……」

ほむら「だけど?」

まどか「今のわたし達の一番の目的は見滝原のみんなを無事に逃がすことだもん。魔女退治っていうより人助けだから……。
    グリーフシードが欲しい魔法少女のひとたちには、ちょっと……かなって思って」

まどか「だったら、マミさんみたいなひとの呼びかけに応えてくれる魔法少女に来てもらった方がいいと思うんだ。
    確かに数は少ないかもしれないけど……人助けに協力してくれる魔法少女だって、絶対いるよ」

杏子「根拠は?」

まどか「マミさんみたいな魔法少女に憧れるのがわたし達だけだなんて、そんなこと絶対ないよ」

さやか「ああ、そりゃ納得だわ」

ほむら「ええ、確かに……」



16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:19:16.02 ID:+SaTNOB50

ほむら(筋は通る、けどそれは、巴さんを一人で行かせる理由には……美国織莉子を警戒してくれてるということ?)

杏子「……お。ここじゃねぇか? 目的地」

ほむら「……ええ、間違いないわ。表札も合ってる。ここが、美国織莉子の家よ」

???「ようこそ、みなさん」

ほむさや杏「!?」

織莉子「そろそろいらっしゃる頃だと思っていました。はじめまして、美国織莉子と申します」

まどか「えと、はじめまして。鹿目まどかです。こっちはお友達のほむらちゃん、さやかちゃん、杏子ちゃんです」

まどか「今日は、織莉子ちゃん……ええと、美国さんにお願いしたいことがあって、来ました」

織莉子「……門を挟んで立ち話というのも難でしょう。どうぞお入りください」

織莉子「ちょうどお茶にしようと思っていたところなんです。あなた達もご一緒にいかがですか?」



18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:22:40.91 ID:+SaTNOB50

……………………。

マミ「……はぁ」トボトボ

マミ(わたしにやってほしいこと……『対ワルプルギスの夜に協力してくれる魔法少女探し』、かぁ……)

まどか『今までマミさんが魔女と戦ったことのある街や場所で、テレパシーで呼びかけてみてください。
    これだと思える魔法少女がいたら、協力してくれるように説得してほしいんです』

マミ(そんな場当たりな方法で見つかるものかしら? わたし、仲の良い魔法少女なんてほとんどいなかったのに……
   わたしの戦い方を認めてくれた子なんて、佐倉さんや鹿目さん達くらいしかいなかったし……)

マミ「やっぱりみんなと一緒に行きたかったなぁ。久々の一人ぼっちはやっぱりさみしいわ……
   今はキュウべぇもいないし。そもそも今はいてほしくもないけれど」

マミ「……佐倉さんが言ってた『お人好しすぎ』って、こういうことなのかしら?(クスン」

マミ「ううん、ダメダメ。しっかりしなさい巴マミ。鹿目さんはわたしのこと頼りにしてくれてるんだから」

マミ「でも、昨日はすっかり鹿目さんがリーダーだったわ……先輩の威厳形無し。
   暁美さんと近づけたみたいなのはよかったけれど、先輩らしくできてないっていうか……」

マミ「もしかしてわたしより鹿目さんのほうがしっかりしてるのかなぁ。
   ほんとはわたしなんか、頼りになんてされてなかったりするのかなぁ。あーあ……」

マミ「……ううん、愚痴っててもしょうがないわね。この辺りで呼びかけてみましょうか」

マミ「いつだったか遠足で来た時以来ね。
   あの頃はもう佐倉さんと喧嘩別れしていて、鹿目さんも美樹さんも暁美さんもいなくて……」



19 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:25:06.00 ID:+SaTNOB50

マミ「思えば、あれから随分色々変わったものよね。
   一年も経ってない筈なのに、なんだかあの頃が十年は昔のことみたいに思えるわ……」

マミ『この街の魔法少女の方、わたしの声が聞こえますか? 聞こえていたら応えてください――』テレパシー

マミ「………………」

マミ「……って、これで応えがあったら苦労はないわね」

???『はい! はい! はーいっ! 聞こえたよっ!』テレパシー

マミ(あった!?)

???「とうっ!」ジャンプ!(高所から跳躍)

マミ「ええっ!?」

 ――シュタッ!(そして着地)

???「ああ! 聞き覚えのある声だと思ったらやっぱり……! あの時私を魔女から助けてくれたお姉さん!」

マミ「え? ええっ? あ……あなた……」

???「あ、ごめんなさいっ! 自己紹介まだでした。私、和紗ミチル――」

かずみ「かずみっていいます! あの時はありがとうございました!」



20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:28:34.83 ID:+SaTNOB50

――見滝原市内某所 美国邸

キリカ「やあやあ、織莉子、織莉子! おかえり織莉子、お茶の準備はできてるよ!」

織莉子「ありがとう。お疲れ様、キリカ」

キリカ「織莉子のためならこれくらいは朝飯前さ! でもひどいよ織莉子、私にお茶の準備をさせて一人で行っちゃうなんて。
    私は一秒だって長く織莉子といっしょにいたいのに!」

織莉子「わがまま言わないの。おもてなしの準備は大切よ」

キリカ「そうだけど! 愛はワガママで鮮烈なものなんだよ織莉子!」

ほむら(ここでも紅茶が……)

さやか『もしかして、この二人もマミさんリスペクトだったりして』テレパシー

ほむら『さすがにそれはないわ……』テレパシー

ほむら(もし彼女たちがそんな魔法少女だったなら、最初から"魔法少女狩り"なんてしやしないもの。
    私だってずっと安心して、この交渉に臨むことができた)

杏子『つーかさ。あたし的にはほむら二号って感じのがちょろちょろしてんのが気になるんだけど』テレパシ-

ほむら『ほむら二号!?』ホム!?

ほむら(えっ? もしかしてそれって、呉キリカのこと……?)



22 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:31:07.84 ID:+SaTNOB50

キリカ「ああー、織莉子ー、織莉子ー、私のキミへ愛はこんな雑用なんかじゃ満たされないんだよ織莉子ー」

さやか「まどかー、まどかー、私のあなたへの愛はこんな雑用なんかじゃ満たされないわまどかー」ボソ

杏子「ぶはっwww」

さやか「ぷっ、く……www」

杏子「ば、ばかっw さやか……ツボ入ったろーがwwwぶははははwwwwww」

さやか「いひひひひ、ご、ごめっ……でも杏子笑いすぎっ……あ、あたしまでつられ、あははははwww」

ほむら「…………っ!(カァァッ」

ほむら『あ、あなた達っ……後で覚えてなさいよ……!///』テレパシー

織莉子「…………? よくわかりませんが……さ、お茶会の準備が整いました。
    まどかさんも他のみなさんも、どうぞおかけになってください」

織莉子「どんなお話を持ってきてくださったのか、是非あなた達の口から直接伺いたいわ」



23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:33:49.83 ID:+SaTNOB50

……………………。

織莉子「……見滝原の人々を守るため、私達と共闘したい」

まどか「はい。……だめでしょうか」

織莉子「………………」ジッ

キリカ「織莉子?」

さやか『……なんであの人、まどかのことじーっと見てるんだろ』テレパシー

ほむら『余計なこと気にしてないで美樹さんは呉キリカをしっかり見張ってて。杏子は美国織莉子を。
    私はいつでも時間停止が使えるように構えておくから』テレパシー

織莉子「……キュウべぇと契約して魔法少女になってから、私はずっとひとつの未来を見てきました」

まどか「未来?」

織莉子「破滅の未来。想像を絶する恐ろしい魔女によって、見滝原が破滅する未来です」

さやか「それってワルプルギスの……」

織莉子「残念ながら、そうではありません(フルフル」

織莉子「ワルプルギスよりずっと恐ろしい……見滝原だけでなく、いずれ世界全てを破滅させてしまう、最悪の魔女。
    私とキリカは、その破滅を回避するために準備を進めていました」



25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:38:56.73 ID:+SaTNOB50

織莉子「ですが、いざ計画を実行に移そうとしたその日、突如としてその未来が見えなくなりました」

ほむら「!?」

織莉子「あなただったんですね。鹿目まどかさん」

まどか「わたしには……ちょっとよくわかんないですけど(ティヒヒ」

まどか「でも美国さんがそう言うなら、きっとそうなんだと思います」

織莉子「あなたは一体、何を考えて……」

まどか「わたしが考えていることがあるとしたら、これです」スッ

織莉子「? ノートのページ……?」

ほむら(何かしら。何か書いてある……)

織莉子「……………………」

織莉子「……確かに。これなら確かに、あの魔女が消えたことも道理です」

まどか「心配でしたら、予知で見てください。というより、見てもらえると嬉しいです(ティヒヒ」

まどか「もし、それを現実にしたとき……美国さんの予知だと、何が見えますか?」



27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:42:02.26 ID:+SaTNOB50

織莉子「……"災厄の魔女"の消滅が確定している以上、私があなたと敵対する理由はありません」

織莉子「見滝原を守るために協力することにも異存はありません。
    保証というには心もとないでしょうが、"これ"も大筋では問題ないように思えます」

まどか「ほんとですか? ありがとうございます。それが聞けてほっとしました」

ほむら「……まどか?」

まどか「キュウべぇ、いる?」

QB「呼んだかい、まどか」キュップイ

ほむら「!」

まどか「キュウべぇ。わたし、あなたと契約する」

ほむら「まどか!?」


まどか「杏子ちゃんお願い!」

杏子「あいよ」ガシッ

ほむら「杏子!?」

杏子「悪いね。けど、こうやって抑え込めば、あんたの魔法も役立たずだよな」



30 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:45:45.26 ID:+SaTNOB50

ほむら「っ……美樹さんお願い、まどかを止めて! キュウべぇと契約させないで!」

さやか「わかってるよ、あたしだって!」

杏子「止めんな、さやか」

さやか「な……杏子っ、なんでさ! 魔法少女になるのがどういうことかは、あんただって!」

杏子「軽い気持ちや同情で魔法少女になろうってんなら、あたしがぶっとばしてでもこいつを止めたさ」

杏子「……こいつがあたしやマミに知恵を借りに来た時だって、説得した。
   そんなのは命をかけなきゃならない理由のあるやつしかやるべきことじゃない、考えなおせってしつこく言ったさ」

ほむら「杏子、あなた最初から知って……」

杏子「でもこいつは折れなかったんだ。だったらしかたねーだろ。
   そうまでして命懸けで守りたいものがあんのなら、そいつだけ守りぬけばいい」

まどか「……ごめんね。ほむらちゃん、さやかちゃん。ずっとナイショにしてて。
    ほむらちゃんに知られたら力ずくでも止められそうだし、さやかちゃんは隠し事がニガテだから
    ほむらちゃんにだけは、絶対ばれないようにしたかったから」



31 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:48:08.80 ID:+SaTNOB50

QB「鹿目まどか。キミはどんな願いで、ソウルジェムを輝かせるのかい?」

まどか「わたしは、魔法少女のシステムを変えたい」

QB「その願いで契約は無理だね。あまりに漠然とし過ぎている」

まどか「だよね」

まどか「具体的にはこの用紙に書いてある細目の通りに、魔法少女のシステムを変えたい」ペラッ

一.鹿目まどかが契約により魔法少女となった時点より以後、魔法少女が消費した魔力は即時、最大まで回復する。

一.鹿目まどかが契約により魔法少女となった時点より以後、すべての魔法少女のソウルジェムは
  曇ったり濁ったりすることがなくなる。
  ソウルジェムの濁りによる消耗は、魔力の回復に伴い常に最良の状態まで浄化される。

一.ソウルジェムのグリーフシード化、魔法少女の魂の魔女化は発生しない。
  ただしソウルジェムが全体の一割まで回復するまでの間、魔法少女は魔法を使用できなくなる。

一.インキュベーターは魔法少女が消費し、回復した魔力と同量のエネルギーを取得できる。

(中略)

QB「ちょ」

ほむら「」



32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:50:48.59 ID:+SaTNOB50

………………

一.すべてのインキュベーターはこの願いによる魔法少女システムの改変を知覚できず、改変が存在した事実を
  忘却する。

一.鹿目まどかの契約による魔法少女システムの改変後、インキュベーターによるあらゆる変更・妨害は不可。
  ただし魔法少女の願いによるシステムの改変が発生した場合は例外とし、これを認める。

一.すべてのインキュベーターは、すべての魔女が元は魔法少女であったことを忘却する。第三者によって
  この情報がインキュベーターへ伝えられた場合、インキュベーターはこれを記憶できず即座に忘却する。

一.上記条項による魔法少女システムの改変は、鹿目まどかがインキュベーターとの契約を完了し魔法少女と
  なった時点で即時行われるものとする。

以上。

QB「ちょっと待つんだ、まどか!」キュップイ!

まどか「なに? キュウべぇ」

QB「きみはどれだけ願いを叶えるつもりなんだい! 僕が叶える願いはひとつだけだよ!?」アセアセ

まどか「知ってるよ? だから、これがわたしのたった一つの願い事。
    『この用紙に書いてある細目の通りに、魔法少女システムを作り替えたい』」

まどか「用紙の中にどれだけ沢山のことが書かれていたって、これならたったひとつの願い事だよね?
    願い事はひとつきり。魔法少女システムを思い通りに変えちゃいたいっていう、たったひとつの祈りだもの」



34 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:54:46.45 ID:+SaTNOB50

QB「そんなずるい!」

まどか「えー? そんなのわたしの知ったことじゃないよ。キュウべぇだって嘘はつかないけどずるして言わないことは
    あったんだし。だったらわたしだってずるしてもいいよね?」

まどか「キュウべぇ、わたしはこの祈りで魔法少女になる。できるの? できないの?
    わたしの願いは叶うの? 叶わないの? 大切なことはそれだけ」

QB「むちゃくちゃだ! 鹿目まどか――君は、詐欺師にでもなるつもりかい!?」

まどか「無茶でもなんでもいい。詐欺師だって構わない」キッパリ

ほむら(えー……?)

まどか「希望を抱いて魔法少女になったその結末が、絶望を抱えて魔女になることしかないなんて認めない。
    ほむらちゃんやさやかちゃん、マミさんや杏子ちゃん、みんなを不幸にするだけのルールなら、
    そんなもの要らない」

QB「ま、待つんだまどか! 過去の魔法少女たちのことはいいのかい?
   きみは、彼女達のことで随分心を痛めていたみたいだけど」

ほむら「インキュベーター! あなたは今更そんな事を――!」

まどか「みんなの犠牲は無駄にしない」バッサリ

QB「一言で片付けたー!?」キュップイー!?



35 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 12:59:07.16 ID:+SaTNOB50

キリカ「ねえ織莉子、彼女は一見かっこいいこと言ってるけど、
    あれってつまり『それはそれ、これはこれ』ってことじゃないかい?」

織莉子「しっ。キリカ、そんなこと言っちゃダメ」

まどか「ええと、実はだいたいそれで合ってるんだけど……(ティヒヒ」

まどか「……さ。わたしの話はこれでおしまい! わたしの祈り、わたしの願い! もう聞いたよね!」

QB「ちょ! これはあんまりだよまどか!」

まどか「さあ、叶えてよ――――インキュベーター!!」

 ――カッ!!

QB「わけがわからないよ――――――っ!!」

 バシュゥゥゥゥ――――――――――――ン!!!!!



36 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:02:26.09 ID:+SaTNOB50

――数日後 "ワルプルギスの夜"襲来当日

ほむら「……避難の方は、どうなってますか?」

マミ「昨日のうちは少し混乱があったみたいだけど、今はもう落ち着いたものよ。
   あの避難所に入るはずだったひとたちは、風見野の総合体育館と市民ホールに避難してる」

マミ「何か理由があって無理にでも市内へ戻ってくるひともいたみたいだけど、
   そっちは美樹さんや牧さんが連れ戻してくれてるわ」

マミ「それにしても驚いたわ……本当にいるのね、台風のときに田んぼの様子を見に行く人とか」

ほむら「避難が上手くいってよかったです。ワルプルギスの夜の直接の被害を避けられたとしても、
    嵐で被害が出てしまったら元も子もないですし……」

マミ「そうね。美国さんの予知だと上手くいくことになっていたけど……
   何がきっかけで未来が変わってしまうかなんて、分からないものね」

マミ「ああ、でも避難先の方だと、マットレスや毛布が足りないってバタバタしてたりするみたいよ?」

ほむら「見滝原最大の避難所に入る分が全部他所に行きましたからね。仕方ないでしょう」

ほむら「申し訳ないですけど我慢してもらいましょう……今日限りのことですし」

マミ「そうね(クス」



37 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:05:58.33 ID:+SaTNOB50

ほむら「……そうですね」

ほむら(………………)

 まどかが魔法少女になってから、数日が過ぎた。

 あの後、あらためてまとめられた見滝原市民の避難計画は、滞りなく実行された。
 もっとも美国織莉子の未来予知を頼りにして、危険を避けるよう計画を修正しつつ臨んでいたのだ。
 滞りないのは当然――とまでは言わないが、むしろ順当な結果ではあった。

 元々、災害時の避難計画は見滝原市に存在していた。
 私達は杏子の幻覚を使ってワルプルギス出現の前兆であるスーパーセルの兆候を、一日だけ早く
 観測したことにしてもらい、余裕をもって避難誘導を実行させることにした。

 巴さんが連れてきてくれた、他所の街の魔法少女の存在もあった。
 和紗ミチル、御崎海香、牧カオル、神那ニコ、宇佐木里美。
 単純に人数が増えたことだけでもありがたかったが、特に記憶の操作や魔法のコピーが可能な御崎海香と、
 人を操る魔法を持つ宇佐木里美の存在は大きかった。

 杏子一人で受け持つ筈だった幻術による処置を御崎海香と二人で分担できたこと――それでも難儀する場面、
 行動の精度を要求される場面を、宇佐木里美の"ファンタズマ・ビスビーリオ"で補えたこと。
 これにより、計画の実施はぐっと楽になった。
 それでもなお発生する『取りこぼし』は、他の魔法少女を直接助けに向かわせることでフォローしていった。



38 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:08:29.85 ID:+SaTNOB50

 ……なお、元々避難所であった場所は、当初の計画通り爆破した。

 せっかく幻覚を使える人間が二人に増えたうえに予知まであるのだから、何も壊さなくてもよいのでは
 ないかと言ってはみたがのだが……まどか曰く「確実にできるところは確実にしたい」とのことで……
 数日前の深夜、警備員の巡回の隙を突いて誰もいない時間帯に爆弾を起爆させ、
 さらには巴さんの"ティロ・フィナーレ"を叩きこみ、無人の避難所は瓦礫の山に変わることとなった。
 スーパーセルの予報を受けた見滝原市役所は、市内最大の避難所を爆破した"正体不明のテロリスト"に
 あらん限りの悪態をつきながら、それでも必要な仕事を丁寧にこなし、行き場をなくしていた市民を
 きちんと避難させていった。

 迷惑かけてごめんなさい。
 爆破準備の時は、本当にこんなことして大丈夫なのかなぁ……とは思ったんです。一応……。

かずみ「おねーさーん!」

マミ「あ、和紗さんだわ。こっち、こっちよー」

かずみ「警察と消防署、撤収に入ったみたいだって、ニコと海香から!」

マミ「わざわざ伝言に来てくれたの? ありがとう。テレパシーでもよかったのに」

かずみ「それもですけど、そろそろ時間だったから」



40 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:11:07.97 ID:+SaTNOB50

ほむら「……和紗ミチル」

かずみ「はい?」

ほむら「あなたのところからは、五人も魔法少女が来てくれているけれど……
    もちろんその事は嬉しいのだけど。あなたの街の方は大丈夫なのかしら?」

かずみ「心配しなくてもだいじょうぶだよ。あすなろ市にはサキさんとみらいちゃんが残ってくれてるから」

マミ「和紗さんの"プレイアデス聖団"は七人の魔法少女チームなのよ。
   だから『プレイアデス』……ギリシャ神話の七人姉妹の名前ね」

ほむら「はぁ……」

マミ「じゃあ、時間みたいだから……配置につかないと。わたしも行くわね」

マミ「……暁美さん。ワルプルギスの夜を越えたら、みんなでお祝いしましょうね。
   わたし、とっておきのケーキと紅茶をごちそうするわ」

かずみ「だったら私ご飯作ります! 料理得意ですよ!」

マミ「そうなの? じゃあ和紗さんにもお願いしようかしら」

かずみ「はい! 任せてくださいっ!」

マミ「じゃあ……行ってくるわね、暁美さん」

ほむら「ええ。頑張ってください」

マミ「……暁美さんもがんばって。無理はしないでね」シュタッ



41 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:15:19.63 ID:+SaTNOB50

ほむら「………………(フゥ」

ほむら(……今のところは、何もかも上手くいっている)

ほむら(まどかが、魔法少女になったお陰で……)

まどか「ほむらちゃーんっ」

ほむら「まどか?」

まどか「こんなところにいたんだ! どうしたの? ぼーっとしちゃって」

ほむら「ううん、大したことじゃないの。ただ……今までのこと、思い出して」

まどか「そっかー……」

ほむら「………………」

まどか「………………」

まどか「……ありがとね、ほむらちゃん」



42 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:18:29.08 ID:+SaTNOB50

ほむら「え?」

まどか「ほむらちゃんがいてくれなかったら、こんなにうまくいかなかったよ」

ほむら「……私は何もしてないわ。
    計画の軸になってるのは幻惑魔法を使える杏子だし、魔法少女の味方を連れてきたのは巴さん。
    何よりこの状況を作ったのはあなただわ、まどか」

ほむら「私は何もしていないわ。少なくとも、お礼を言われるようなことはね」

まどか「ほむらちゃん、それは違うよ」

ほむれ「……えっ?」

まどか「あのね……こんなときにどうかと思うんだけど、わたし、ほむらちゃんに一つだけ言いたいことが」

ほむら「な、何っ!? 今度は何っ!?」ガタガタビクビク



43 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:23:18.50 ID:+SaTNOB50

まどか「ああ! ご、ごめんねっ!……そんな怯えないで!(アセアセ」

まどか「だから、その……うん、ほむらちゃんが怯えてるのってわたしのせいなんだけど、
    言いたいことってそのことで、その」

まどか「ご、ごめんね。ほむらちゃん……あの時は、ひどいこと沢山言って」

ほむら「……そんなの別にいいわ。気にしてない」

ほむら「あの時も言ったじゃない。まどかの言ってた事は本当のことだもの。
    私はたった一度の祈りで、あなたとの出会いをやり直すんじゃなくて、素直にあなたの事を、
    あなたが守ろうとしていたものを、救っていればよかったのかもしれない」

まどか「でも、そしたら今のわたし達はいなかったよね」

ほむら「……まどか?」

まどか「ワルプルギスの夜が現れる日と場所と、そのせいで起こる被害のことを教えてくれたのは誰?」

まどか「織莉子ちゃんのことを教えてくれたのは誰?」

まどか「何より、魔法少女の仕組みをわたし達に教えてくれたのは?
    わたしがキュウべぇとうっかり契約しないように、ずっと守ってくれたのは?」



44 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:26:11.21 ID:+SaTNOB50

まどか「ワルプルギスの夜が来て起こることが分かっていたから、こんな計画だって立てられた」

まどか「織莉子ちゃんの予知で少しだけ未来が分かっていたから、わたしは魔法少女になる勇気を持てた」

まどか「魔法少女の仕組みが分かっていたから、たった一度きりの願いがまだ残っていたから、今みたいな願いの使い方ができた」

まどか「だから今、いろんなことがうまくいってる」

まどか「これって、ぜんぶ、ほむらちゃんのおかげじゃないかな」

まどか「ほむらちゃんがずっと頑張ってくれてた時間があったから……
    だから、いろんなことが上手くいってるんだと思う」

ほむら「……まどか」



46 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:29:34.16 ID:+SaTNOB50

まどか「だからね、あの時もそれはわかってて……
    だから別にほむらちゃんが間違ってたとか、ほむらちゃんに怒ってたとかじゃなくて。ただ、あの時はその」

まどか「……イラッときちゃって」

ほむら「それ、普通は怒ってるって言わない?」

まどか「ち、ちちち違うのっ!/// そうじゃないのっ!」

まどか「だ、だってほむらちゃんいっつもわたしやみんなに秘密ばっかりで!
    一人で抱え込んでマミさんやさやかちゃんとケンカしたりするし!
    みんなと仲良くなったらなったでわたしのことだけのけものにしようとするし!
    そんなのひどいよ! あんまりだよ! わたしだって!」

まどか「わたしだって、ほむらちゃんのこと守れるわたしになりたかったもん!」

ほむら「え……っ?////」

まどか「あ……/////////」

ほむら「それが……怒ってた理由?」

まどか「う、うん。……それで、あの時ついイラッとしちゃって////」

まどか「そのー……せっかくの機会だから、さやかちゃんやマミさんともっと打ち解けておいて
    もらいたいなーとか考えたりしなくもなかったんだけど、
    でもそれも喋ってる途中からで、だからそれを理由にしちゃうのも言い訳みたいだし、その」

まどか「ほ、ほんとに、ごめんね……ほむらちゃん。ひどいこと言って」



47 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:34:22.27 ID:+SaTNOB50

まどか「ほんとに、ごめんね……ほむらちゃん。ひどいこと言って」

ほむら「ううん、謝らなくていい……おかげで美樹さんや巴さんと、また仲良くなれたから」

まどか「うん……それとね、ありがとう。今までずっとがんばってくれて」

まどか「これからはわたしも頑張る。一緒にがんばろう」

ほむら「うん……」

ほむら「一緒にがんばろう。まどか――」

マミ『鹿目さん、暁美さん! 来たわ、ワルプルギスの夜!』



48 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:38:00.74 ID:+SaTNOB50

まどか「!」

ほむら「位置は!?」

マミ『予定位置ピッタリ。わたしと和紗さんで迎撃に入るわ!』

ほむら「お願いします! でも無理はしないでください。最初は様子見で十分なんですから」

杏子『観測所の連中全員、風見野まで運んできたぜ! 今ちょうど指定の待機位置に入った。
   ――マミ達の迎撃に続いて突撃するぜ! 爆弾のポイントまで押し込んでやるよ!』

さやか『ご、ごめん! あたし遅れたっ! 風見野の市民ホール出たばっかだからまだ時間かかるっ……!』

杏子『はぁー!? 何だそれトロすぎだろ! もうそのままそこで待ってたらどうだ?
   さやか一人いなくたって、こっちはワルプルギスくらいどうにでもなるからさ!』

さやか『うっさい! 主役は遅れて来るもんなの!
    すぐにさやかちゃんの凄いとこ見せてやるから、楽しみに待っとけ杏子!』

マミ『二人とも。ワルプルギス退治は本題じゃないのよ?
   当初の勝利条件は達成した。危険になったら撤退するんだから、気合を入れるのも程々にね』

まどか「ウェヒヒ♪ みんな元気だねっ」

ほむら「そうね……(クス」



49 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:44:43.13 ID:+SaTNOB50

 私の願いが叶うことはなかったけれど、ワルプルギスの夜は越えられる。
 まどかが幸せになれる未来。私が願った形ではないけれど、私はそれを掴むことができるだろう。
 まどかの隣で彼女を守る――これが私の運命だというなら、それを受け入れよう。
 私は。

まどか「行こ、ほむらちゃん!」

ほむら「うん!」

 まどかの隣に並んで。私は夜を越えるために跳んだ。


おしまい



51 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:57:43.95 ID:Sgf+R1qq0

乙乙ー


50 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/30(日) 13:48:01.32 ID:j1u960wmO


なかなか良かった



コメント一覧を上に持ってきてみました。細かいデザインを考え中です。
デザイン崩れの修正完了しました。

    • 1. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年01月31日 18:44 ID:XyVwP1Lr0
    • 群馬県ワロタ マミさんも達観しててワロタ
      まあでも、ワルプルギスってやっぱり倒せないもんとして考えるのが普通だよな 二次創作で倒したりしてるけど無理やろ ほむらがあんだけやってもあんとき本気にならなかったんだからさ
      俺はこのシナリオ好きだよ
    • 2. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年02月01日 03:16 ID:T.7Z1HJv0
    • 何だったかな。
      守るべきは生活であって、例え命を助けられたとしても、
      その基盤たる家や街が無くなってしまえばそれは半分しか守ったことにならない、
      というセリフを思い出した。
      まあ結局本編でもまどかが壊された街を見て何も思わなければすべて解決するのは確かだなw
    • 3. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年02月01日 09:02 ID:qt3PYAz50
    • 街に一切の被害を与えずに、ワルプルギスの夜を回避する事も倒す事もできない以上、こういうやり方もありだと思う
      「民なくして国は成り立たぬ」的なセリフを自分は思いだしたよ
      しかし、まどかの頭の切れっぷりというか、はじけっぷりが楽しかったな
    • 4. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年02月01日 18:56 ID:wB2sv.8k0
    • 見滝原はグンマーにあったのか…
    • 5. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年02月03日 21:38 ID:Gq0cW.mN0
    • これに近いことは妄想したけど、これはすごい
      話の筋が通ってておもしろかった
    • 6. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年02月06日 03:05 ID:83EZ.zIy0
    • ないわ、ありえない

      そもそもまどかがこんな風に考えられる人だったらほむらがあれほどループする事態に陥る前に完結してる
    • 7. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年02月06日 22:04 ID:C7wMG8Tr0
    • 前半あれだけロジカルにやってたのに
      結局インチキ願いやっちゃうのか
      もったいない

    • 8. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年02月07日 22:32 ID:8y38p.r10
    • 論理的だったら願いを使わないのはありえないだろ
      魔力回復さえなんとかすれば契約のデメリットは無い
      そもそもワルプルだけ超えても、魔力問題解決しないとその内市ぬしな
    • 9. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年03月05日 22:47 ID:9zvILGOA0
    • 一つ疑問

      ソウルジェムは心が負に向かうと濁るけど、ソウルジェムが濁らなくなったってことは心が病まなくなったってことになるの?
      それともやっぱり絶望→濁るは成り立つけど濁る→絶望にはならないってことか?
      教えてエロイ人
    • 10. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年03月21日 01:28 ID:YQHU1l6n0
    • 濁らないソウルジェムって永久機関だと思うんだけど
      それができたら宇宙のエネルギー問題とかもう解決じゃない?無理でしょ

      そしてそんな便利なものができたらQBたちは最高の
      エネルギー源として母星にでも持って帰って魔力タンクにするんじゃない?

      この願いは場合によっては人類が家畜どころじゃなくなっちゃうよ
    • 11. 円環に導かれし名無しさん
    • 2013年03月25日 23:07 ID:5HWNT9hN0
    • QBの行動原理は私欲じゃなくて宇宙の存続だから大丈夫でしょう。
      そもそも、「エネルギーを持ち替える必要」があるなら地球で魔法少女契約なんてしてない。
    • 12. 円環に導かれし名無しさん
    • 2014年01月28日 00:51 ID:t2ImdG7b0
    • 本編ではSGの濁りは契約者のまどかが一手に引き受けてたけど、そういう必要がないという内容も書かれているんだろうな。
      文字通り無条件で「願いを一つなんでも叶えてあげる」ことが可能ならこれはベストなチョイス。
    • 13. 円環に導かれし名無しさん
    • 2014年08月29日 02:54 ID:CNBKcJgN0
    • QBの「願いを何でも叶えてあげる」ってのは本当に何でもではなくてQBに叶えられることしか叶えられないんだろうね、だって何でも叶えられるとしたら無理矢理「宇宙の寿命を伸ばして欲しい」って願わせればいいんだし、魔法少女システムのルールを好きなように弄るのはまどかの才能があっても無理だと思う。
    • 14. 円環に導かれし名無しさん
    • 2014年11月04日 05:33 ID:NUo7c9FJ0
    • 「願い事を100個叶えられるようにして欲しい」みたいな願い事の類は無効だと思うんだが・・・
    • 15. 円環に導かれし名無しさん
    • 2016年09月29日 07:26 ID:adjIV7KK0
    • ほむらを叩くまどかがウザすぎてストレスマッハだった
      一番自分のことを思ってくれてる人にあの言い草はねえだろ
    • 16. 円環に導かれし名無しさん
    • 2016年10月26日 17:15 ID:tgXooI6A0
    • 過去と未来全ての魔女を生まれる前に消すで因果律に反逆したあげく宇宙を再編したまどかさんからしたら充分可能だろうな
      淫獣も不利な願いを却下出来ないみたいだし
      ただこれだけ大きな魔法少女システムの改竄を行えばやはり概念として固定せれるね

    • 17. 円環に導かれし名無しさん
    • 2017年01月03日 15:34 ID:aO.ja5K30
    • >>9 普通に悩んだりしてもソウルジェムは曇ることが無くなって、例え絶望したとしても魔女になることは無いから普通の女の子らしく悩んだり落ち込んだりできるようになったってことじゃないかな?
    • 18. 円環に導かれし名無しさん
    • 2017年01月03日 15:40 ID:aO.ja5K30
    • >>10
      それはインキュベーターの技術では実現不可能だったし、そんな発想はなかったってだけだろ。例えばさやかがキョロ助の腕を直したように、誰かがQB達のエネルギー収集の効率の改良を願ったら叶うんじゃないかな?今までそれを願う子がいなかっただけで。今回のまどかの願いは勿論エネルギー収集の効率を良くしてほしい、なんてものでは無かったし今の話は例えだって事は念頭に入れておいては欲しいけど。そもそも本編でまどかが願った事によってインキュベーター達のエネルギー回収のやり方は大いに変わってたじゃない。今までで魔法少女の仕組みを知ってて契約した魔法少女がいたならばQBの味方なんか絶対しなくないだろうから、誰もやらないのも納得いく話なんじゃない?文章おかしくなってたらごめん、伝えたい事がつたわったらいいな
    • 19. 円環に導かれし名無しさん
    • 2017年08月04日 00:39 ID:yIHVcqey0
    • >>14「ある1つの願い(魔法少女のシステム変更)を叶えるための条件」ならセーフとか?
    • 20. 円環に導かれし名無しさん
    • 2017年08月04日 00:43 ID:yIHVcqey0
    • >>16「過去からずっと」じゃなくて「今からずっと」だから歴史を書き換える訳じゃない、そんでシステムの改竄するという願いによって発生するまどかのSGの穢れも自身の願いで浄化される訳だから概念にはならない?
    • 21. 円環に導かれし名無しさん
    • 2018年03月20日 11:56 ID:j9quMKig0
    • なんかこの時間軸のまどかいやだ
    • 22. 円環に導かれし名無しさん
    • 2019年08月04日 22:32 ID:pUaehsIG0
    • 5 まどかじゃなくてこれじゃ姿はまどか思考二割まどか八割マギレコの灯火じゃないか😭
      このまどかマギウス以上の事をしそうでなんか怖い🥶
    • 23. 円環に導かれし名無しさん
    • 2019年12月15日 10:22 ID:tz3SwSqD0
    • × 人を蘇らせて
      ◎ 全部元に戻して、おっと悪人を除いて
      の理論を覚えたまどかなんやろ

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